2013年6月4日火曜日

アマルガムの危険性

歯科の補修材料として、アマルガムという金属があります。
これは、水銀とスズ、銀をあわせた合金のことを言います(一般に、水銀と他の金属との合金のことを一般用語で「アマルガム」といいます)。

水銀とは、昔から不思議な性質を持つ金属で、他の金属に触れると、その金属を吸い込むように取り込み、合金を形成します。水銀は液体ですが、合金は元の金属よりはやわらかい個体になります。

奈良の大仏は水銀のこの性質を使って作られました。金を水銀に化合させ、成型し、300度程度で水銀を蒸発させて完成させたのだそうです。(水銀を蒸発させる過程で、蒸気を吸い込んだ労働者が多数死んだと言われています)


歯科用アマルガムの組成割合は、水銀が50%、銀が20~30%、スズが10~15%、その他に銅や亜鉛などが入っていることが多いようです。1980年頃まで、日本でもごく普通に使われており、その年代の人達の口の中には、今でも存在しています。しかし、現在は水銀のリスクを懸念する人が多く、あまり使われなくなりました。今日の日本の歯科医院では、全く取り扱っていないところも多いです。

歯科用アマルガムの原理は次のようなものです。
水銀を、銀やスズの粉末とミックスして泥状のペーストを作ります。混ぜてすぐの時点では、まだ柔らかい泥のような状態です。それを削った歯の穴に詰めます。アマルガムペーストは、詰めてから5分くらいで硬化しはじめ、10分もすると、ほぼ固まります。しかし、完全硬化するまでは24時間以上が必要とされ、それまでは固い食べ物(せんべい等)を避けるべきとされています。


アマルガムのメリットは、
・レジンと同じように液状なので、虫歯を削った穴に直接充填することができる。
・硬化時に膨張するので、きちんと詰めれば、密封性が高められる
・金属なので、奥歯の咬合面に詰めても咬合圧に耐える
・含まれている銀イオンの殺菌効果により、二次カリエスになりにくい
・マイナス帯電のため、食物残渣を寄せ付けにくい

といったことがあるようです。
特に、奥歯の咬合面に直接充填できることのメリットは大きいと思われます。


反面、デメリットは、
・水銀を体内に吸収してしまう
・インレーよりは柔らかいので、長期利用によってすり減る
・水銀が蒸発していくことにより、詰め物に微細な穴が空き、経年劣化する可能性がある
・あまり大きい窩洞には適さないとされる(咬合面にちょっと空いた虫歯穴を埋める、くらいの時が一番効果が高い)

ということです。

何といっても、圧倒的なデメリットは水銀の吸収リスクです。
水銀は常温でも蒸発するので、詰めた後は、どんどん蒸発したり、唾液とともに溶け出していくと考えられています。
高温状態でなければ流出しない、というものではないのです。
食事の時の咬合や、熱いお茶を飲んだ時などの流出は避けられないと思われます。


硬化したアマルガムには水銀が数%しか含まれていない、と主張する人もいるそうですが(JIS工業規格ではそうらしい)、これって本当?と疑ってかかる必要があります。

だって、詰める際には50%もの水銀が含まれているのに、硬化したときには数%だなんて信じられません。もしそうなら、40数%は硬化するまでに流出または蒸発したということになり、それはそれで大変危険なことです(水銀は呼吸器から入るほうが人体へのダメージが大きい)。

アマルガムは、あくまで水銀が他の金属と合体して固体になったものなので、そこに水銀が含まれていると考えるのが妥当でしょう。


しかし、そんなものは、数年経過した患者の歯のアマルガムを採取して組成を調べれば済むことです。しかし、色々な英語版のサイトを見ても、EPA(アメリカの環境省)のサイトを見ても、水銀はあくまで50%と書かれており、硬化したアマルガムは水銀が少ないので大丈夫!とかいう記述は一切ありません。よって、やはり水銀はたくさん歯の中に残っており、年々ちょっとずつ流出しているというのが真相だと思います。





で、そんな水銀のリスクですが、水銀が有機的に脳や内蔵に蓄積されると、危険であるとされています。
頭痛、眩暈などの軽度のものから、歯茎の損傷、重度ではALSやアルツハイマー、胃炎、腎臓疾患などを引き起こします。

一応、アマルガムに入っているのは水俣病のような有機水銀ではなく、金属の水銀なので、人体への影響は限られていると言われています。水銀は、炭素系を採り込んだ有機水銀の形態が非常に危険ですが、金属のままであれば消化器からは吸収されにくいためです。ちなみに、水俣病の原因になったのも、メチル水銀を中心とした有機水銀でした。

しかし、
・体内に取り込まれたときに、消化器官の細菌が水銀を有機化する可能性
・食事や会話の際に、アマルガムから水銀蒸気が発生して吸入してしまう可能性
・口腔内の粘膜から吸収してしまう可能性

などがあり、完全にクロとは言い切れないまでも、シロとも言えません。

「水銀」という言葉に過剰反応した、センセーショナルな研究結果を報告する研究者もいます(歯科用アマルガムが口の中に多い人ほど、疾患率が上がる、等)。しかし、決定的な論拠とはなっていない、というのが、WHO等の見解のようです。

しかし、きちんと使えば歯科補修材料としては大変優れているアマルガム。
一長一短です。


基本的に、疑わしい材料だと思うので、水銀の影響を特に受けやすい発育段階の子どもには、使わないほうがいいでしょうね。(といっても、今では使っている歯科がほとんどないのですが)

レジンの耐久性を考えると、奥歯の咬合面には、使ってもいいような気も…。



こうやって考えると、本当に痛感するのです。
「虫歯が1本も無い」ということのメリットがいかに大きいかを。

余計な材料を口の中に入れなくてもいい。
痛くない。
噛み合わせも崩れない。
お金もかからない。
何より、余計なことで悩まなくていいので人生が楽しい。

健康って大事だね、と、歯がボロボロになってから、思います。