2013年6月3日月曜日

虫歯治療における保険のお話

現在の日本の虫歯施術というのは、少なくとも、保険で行われている限り、まともなものはごくわずかであろうと推測されます。

「まとも」というのは、

(1)虫歯部分を完全に除去する
(2)密封性の高い材料でフタをする(少なくとも10年はもつように)
(3)健全歯質はできるだけ削らない。神経はできるだけ抜かない。

という、この3点が実行できるだけでいいのです。
虫歯対策としては、ごくごく当然な要求だと思われます。

しかし、日本の歯医者ではこれはまず叶いません。

日本の歯科医の大半は、虫歯のみを100%きちんと削り取る、という技術が無い場合が多いと思われ、基本的に、削り残しか、または、削りすぎ、という状態になります。(削り残しがあれば、いくら詰め物をしてもそこからまた虫歯が進行します。削りすぎると歯が脆くなり、神経が近い場合には抜髄に至ることもあります)


それには、2つの理由があります。

・技術が無いのでできない
・保険での施術では赤字になるのでできない

まず1点目。
日本の多くの歯科医は、きちんと削って適切な材料で詰める、という一連の処置ができていないように思います。単純に、技術が無いからです。なぜ技術が無いかというと、完璧に仕上げた経験が無いからです。いつも適当に削って適当に詰める、あるいは簡単に抜髄してしまっているのです。特に、何でもかんでも保険適用のCR(コンポジットレジン)をくっつけて終わりにしている歯科医が多すぎます。

ではなぜ、彼らは適当なことばかりしているのか? なぜ完璧を期さないのか?

そこで2点目の理由が登場します。
日本の保険制度の下では、十分な時間と十分な材料費がかけられないから、です。

日本の保険点数というのは処置毎に決まっていて、削って2000円、詰めて3000円(あくまで仮の例)、とかいった具合です。

虫歯1本を(場所にもよりますが)きちんと削ってきちんと詰めようと思えば、1本について30分~1時間くらいは確保してほしいところです。

しかし、保険適用下ではそんなことはできません。1時間かけて数千円しか回収できないのであれば、確実に赤字です。歯科医院というのは、器具などの固定費や家賃、歯科衛生士の人件費など、かなりお金のかかる商売です。よって、保険診療だけを対象とすると、歯科医1人が1日に30人ほどを相手にしなければ損益分岐点にすら到達しないと言われています。

開業時間を10時間として、その間、休みなく患者を入れたとしても、1時間に3人を担当しなければならない計算です。1人20分です。これでは、落ち着いて虫歯など削れないでしょうから、削り残しがあっても適当に詰めてしまったり、雑に削りまくって神経まで到達してしまい、本来なら助けられたはずの歯の神経を抜いてしまったりすることになるのです。

また、材料の問題もあります。
保険適用の虫歯治療であれば、補修材料も限定されています。つまり、安い材料でしか詰めてもらえません。安い材料とは、つまり粗悪品ということで、強度が無かったり、短い年月で劣化したり、隙間ができやすい、といった材料のことです。(具体的には、パラジウムインレーやCR等)


このような事情で、日本の保険制度の下での歯科治療はかなり無茶なものになっています。
歯科医にとっても患者にとっても、メリットはありません。

それだったら、高い価格でもいいから、きちんとした施術をしてもらい、10年、20年と問題なく歯を維持できることのほうがはるかに重要ではないでしょうか。


現に、歯科医院もそれに気づいていて、最近は医院側が自由に高めの価格を設定した自由診療が主流になりつつあります。セラミックだのゴールドだの、よさそうな材料を使って詰める、と謳っているのです。虫歯以外にも、予防、審美、歯周病、インプラントなどを自由診療で幅広くやっているところも多いですね。

しかし、ここでさらに大きな問題があります。

「自由診療(保険の適用外の診療)であれば、歯科医はきちんとした治療ができるか?」

ということです。

おそらく、答えはNoでしょうね。

というのも、保険診療をしてきた歯科医には、まともに虫歯を削って詰める技術がそもそも備わっていない可能性が高いからです。

自由診療であれば、材料こそ良いものにシフトしているでしょうが、肝心の「削って詰める」という腕はへたくそなままなのです。


よって、しばらくの間、日本では、
「虫歯を削って詰めてもらったのに、またその下に虫歯ができる」
という、あほらしい二次カリエスになってしまう人が多いままだと思われます。

どんなにブラッシングを入念に行っても、詰め物の下は磨けません。
もし、虫歯の取り残しがあったり、詰め方不良で詰め物と歯の間に隙間が空いていれば、そこから虫歯は再度進行してしまいます。



私が今まで歯医者を何十件も回った経験から主観で言えば、日本の歯科医の9割以上は、へたくそです。彼らに削って詰めてもらうと、歯に何らかのトラブルを抱えます、将来。

彼らは、「削って詰めた歯は、それだけリスクがあると思ってください」「詰め物の下の虫歯は、外してみないとわからない」などと言いますが、それは無責任というべきものです。きちんと削り、きちんと詰め、定期的に検診を受けていれば、二次カリエスにならない、と保障してくれるのが正当な治療だと思います。

それができる(できそうな)信頼できる歯科医にたどり着くまで、面倒でも、歯科医をハシゴしたほうがいいと、私は思う次第です。