2013年6月11日火曜日

インプラントのリスクを示唆した典型的事例

患者争奪で激化する治療費値下げ合戦
歯医者と歯科医療の意外な真実に迫る!

http://diamond.jp/articles/-/37124


以下、要旨。

今年1月18日、福岡・博多の一等地にある歯科診療所、シティデンタルクリニックの門前に一枚の紙が張られた。そこには「閉院のお知らせとおわび」とあった。

60人以上の患者がそれぞれ数百万円ものインプラント治療費を前払いしており、破綻によって患者たちが大金を失ってしまったのだ。すでに治療していた患者に、まともな手術が行われていなかった疑惑までも浮上

売り上げ不振の背景には、国内インプラント市場全体の急激な縮小があった。出荷本数は2008年をピークに減少に転じ、12年にはピーク時の約3分の2となる40万本強まで落ち込んだ。

2013年6月8日土曜日

歯に悩みを抱えることの辛さ

私は虫歯も多いし、歯周病も中程度まで進んでいます。

前歯12本(上下6本ずつ)以外は、虫歯のせいで何らかの詰め物がされています。
まるでサイボーグのようです。

また、歯周病も進んでいるようで、噛み合わせも悪いので、一部の奥歯が揺れてきています。

歯周病に伴い歯肉が全体的に下がってきているので、歯に鈍痛があります。うずきます。

前歯が月日の経過とともに、ちょっとずつ乱れてきて、噛むと一部の前歯同士がつんのめって当たるようになってしまいました。前歯が痛いです。

食事のたびに歯が揺れる感覚があり、生きた心地がしません。ものを咀嚼するのにも非常に気を遣います。食べ物も、かなり制限せざるをえなくなります。
(歯にへばりつくチョコレート、ケーキ、パン、バナナ、餅、和菓子などは食べない。 リンゴ、キュウリ、煎餅、イカ、タコ、スジ肉などの固いものも食べない)

最近、会話するのもちょっと辛い時があります。鈍痛や、歯が浮く感じ、のせいです。

狂ったように歯垢を落とそうとするようになります。

いつ歯を失うか、心配で心配で、 毎日心の休まる時がありません。
鈍い痛みもあるので、忘れて何かに集中することも難しくなりました。

夜眠るときだけが、唯一、救われる瞬間です。
「ああ、これで次に起きるまでは歯のことを考えなくていいんだ」と思えるからです。

歯周病は本当に恐ろしいものです。
噛めなくなる、会話しづらくなる、といったことに加えて、ブラッシングに異様に気を遣う、常に鈍痛がある、頭がボーっとする、集中できない、といった副作用を引き起こします。


何より辛いのは
「ずっと歯のことで悩み続けなければならない」
という、延々と続く苦行のような状況に陥ってしまうことです。

劇的な治療方法があればいいのですが、2013年時点では、そこまでの特効薬や治療法は無いそうです。 人類の殆どが罹患する病気なんだから、早く治療方法を確立してよ・・・と思うのですが、まだ先は長そうです。

歯の再生医療への期待と不安

歯の再生医療が、ここ10年ほどで結構進んだようなニュースを見ます。

動物実験などで、

「歯根膜が再生できた」
「歯槽骨が再生できた」
「歯が丸ごと再生できた」

などのニュースが散見されるようになりました。
主に、本人から抽出した幹細胞を使ったもの(歯周組織そのものを実験室で増やして患部に埋め込む)と、サイトカイン等の培養液を使ったもの(培養液を患部に塗って、歯周組織の再生を促す)とがあるようです。

人間でこれを再現するには、 まだまだ臨床実験が必要だそうです。論文やニュース記事などを流し読みしている中では、以下のような期待と不安があります。

【期待】
・まだ歯を失っていないが、歯周組織が破壊され始めている人(虫歯で詰め物をしている人、歯周病が進んだ人、等)の歯、歯根膜、歯槽骨を、元のピカピカな状態に戻せるかもしれない。
・既に歯を失ってしまった人が、元の歯を取り戻せるかもしれない

【不安】
・実際に臨床で使えるようになるまでには、何年もかかりそう(10年後とか)
・最初は、適応症が限定されてそう(前歯しか再生できない、とか)
・幹細胞を使う場合は、幹細胞の腫瘍化(癌化)が起こるかもしれない
・歯肉の切開が必要なので、痛そう
・水平的に下がった歯槽骨の再生はまだ難しいかも
・保険適用ではないので、100万円単位で値が張るかもしれない
・歯槽骨再生については、インプラントの埋め込みとセットである場合も多く、インプラントを避けたい人には無意味



感覚的には、実用化が早い順に、

浅い虫歯(エナメル質)の治癒 > 歯肉の再生 > 限局的な歯槽骨の再生 > 深い虫歯(象牙質)の治癒 >  歯根膜の再生 > 歯槽骨の再生 > 歯全部の再生

のようになるのではないかと思います。

歯全部の再生ができるのはいつごろかなぁ・・・。
これが全部、10年以内に実現するといいんですけどね。



アメリカ人の歯

アメリカ人は、歯のケアに熱心と言われます。
しかし、日本人よりずっと綺麗に磨いているかというと、そうでもなかったりします。

1日2回、朝と晩に磨き、晩はフロスをする。
それくらいでしょうか。

でも、彼らは歯に悪そうな食べ物をたくさん食べていますよね。
チョコレート、キャンディー、コーラ、ガム、ドーナツ、など
糖分が多くて虫歯になりやすそうなものが多いです。

でも、虫歯にはなりにくいです。
アメリカの中流家庭では、虫歯は1本も無い、という人も多いです(1/3くらい)
詰め物だらけ、という人はあまり居ません。

その理由として、以下のような事情があるみたいです。

・若い頃に矯正をするので、歯並びが綺麗 → 虫歯になりにくい
・水道水にフッ素が添加されており、若い頃に歯質が強化されている
・定期的に歯科検診に通う習慣がある


努力というのは、方向性さえ間違えなければ、あまりしなくても良いものだったりします。
アメリカ人のデンタルケアは、まさにそれ。

若い頃に、虫歯になりにくい条件を整えておけば、一生苦労しない。
これが虫歯に関しては最強の予防法です。労力が少なくて済むので。


特に、歯並びの良さに起因する磨きやすさ、というのは重要かなぁと思います。
10分くらいサっと磨けば、綺麗になってしまう、美しい歯並びの人と
入念に細かく磨かなければ綺麗にならない、ガタガタの歯並びの人

であれば、後者はどんなに努力しても、前者に及びません。
そのうち、磨くことに疲れて、磨き残しができ、虫歯になってしまうのです・・・。
悲しいですが、歯の健康は、若い頃が勝負です。

2013年6月6日木曜日

日本における歯の教育


西洋人は、おしなべて歯が綺麗です。ここで歯が綺麗というのは、歯並びがよく、かつ、虫歯の本数が少ないという意味です。
とくに、中流以上のアメリカ人(アメリカは先進国ですが貧富の差が激しいため)では、虫歯の発生本数も大変少ないというデータがあります。(統計値は後ほど)

アメリカ人と話していると、歯のケアに関する意識が非常に高いことに気付かされます。
そもそも、歯というのは爪や髪と異なり、毎日きちんと適切なケアをしなければ、虫歯と歯周病によって失われてしまうものなので。ケアの知識を持つことは、普通に寿命を全うしたいなら、大変重要なのです。(この点、髪や爪のケアに余念の無い日本人女性と似ています)

なぜなら、普通に日常的な食事をしているだけでも、人間は虫歯や歯周病を患う可能性が高いからです。
人間は火を使います。調理して、柔らかくして食べます。砂糖も大量に使います。
自然の摂理に反することをしているので、野生動物には必要のない「ケア」が必要になるわけです。

しかし、日本人はそのことをあまりよく認識していない気がします。
正確には、認識している人の割合が低いです。

「歯磨きしないと虫歯になる、歯周病になる」ということはわかっているのですが、

「何を食べたら歯垢が増えやすいか」
「どこを磨けばいいか」
「何分くらい磨けばいいか」
「いつ磨けばいいか」
「歯ブラシ以外にどんな道具を使うべきか」

といった知識が浸透していないので、馬鹿正直に食後に歯磨きを手短に済ませ、歯を失っている傾向があります。
(歯垢を落とし切れていないため)

それから、根本的な問題として、危機感が薄すぎると思われます。

「虫歯や歯周病がいかに恐ろしいか」
「虫歯や歯周病は、予防が最大の防御で、発症したら完治しない」
「発症すると、痛いし、時間がかかり、お金もかかる」
「入れ歯やインプラントは、天然歯にはとても及ばない」

といったことが、少年時代から教育されていないのです。




では、何が必要か?

子どもの場合。
ずばり、親や教師からの教育。これに尽きると思います。
そのためには、親や教師が、まず知識と危機感を持っていなければなりません。

子どもは歯周病にはなりにくいので、虫歯と歯並び対策中心の教育になると思いますが、

・虫歯や歯周病の生々しい説明
・虫歯になりやすい食べ物(特に、砂糖)
・虫歯になりやすい生活習慣(間食を避ける、寝る前にケアする、鼻呼吸する、等)
・フッ素、CPP-APC、キシリトール等による予防
・正しい歯垢の落とし方(ブラシ+フロス+歯垢染色液)
・バランスの良い食事と、左右均等な咀嚼
・歯並びを乱す悪習慣の解消(ほおづえ、片側噛み、横向き寝、歯ぎしり等を避ける)

といったことが非常に重要です。

個人的には、特に永久歯の生えてきた子どもには、1本も虫歯を作ってほしくない、と思います。
少しの歯科補修でも、噛み合わせが狂いますし、補修材料も子どもの発育には良くないからです。
また、痛い側で噛まなくなる可能性もあります。


これと同時に、半年に1回程度の歯科チェックも欠かさないように習慣化すべきです。



大人の場合。
・歯垢が発生しやすい食べ物(特に、砂糖)
・歯垢が発生しやすい生活習慣(間食を避ける、寝る前にケアする、鼻呼吸する、等)
・フッ素、CPP-APC、キシリトール等による虫歯予防
・正しい歯垢の落とし方(ブラシ+フロスor歯間ブラシ+歯垢染色液)

といった子供と同じ内容に加えて、
・特に20代、30代には、これから来る歯周病の危険性の周知と対処方法
・歯槽骨の減り具合の定期的なチェック
・2次カリエスについての周知
・根面う蝕についての周知
・神経をとることのデメリットの周知
・入れ歯、インプラントの難点の周知

といったことが必要と思います。

まだ歯を失っていない人は、歯のケアを安易に考えてはいけないと思います。
日々のちょっとした怠慢と無知が、後年、死活問題を引き起こします。

最低でも寝る前には20分~30分、正しく歯垢を落とす。
間食は控える。有糖のコーヒーや清涼飲料水も控える。
歯の状態が悪い人は、歯にへばりつく食事や砂糖の多い食事を控える。
3ヶ月に1回は歯科のチェックとクリーニングを受ける。

他愛もないことですが、それが人生を左右します。
無知とは、恐ろしいことです。

2013年6月4日火曜日

アマルガムの危険性

歯科の補修材料として、アマルガムという金属があります。
これは、水銀とスズ、銀をあわせた合金のことを言います(一般に、水銀と他の金属との合金のことを一般用語で「アマルガム」といいます)。

水銀とは、昔から不思議な性質を持つ金属で、他の金属に触れると、その金属を吸い込むように取り込み、合金を形成します。水銀は液体ですが、合金は元の金属よりはやわらかい個体になります。

奈良の大仏は水銀のこの性質を使って作られました。金を水銀に化合させ、成型し、300度程度で水銀を蒸発させて完成させたのだそうです。(水銀を蒸発させる過程で、蒸気を吸い込んだ労働者が多数死んだと言われています)


歯科用アマルガムの組成割合は、水銀が50%、銀が20~30%、スズが10~15%、その他に銅や亜鉛などが入っていることが多いようです。1980年頃まで、日本でもごく普通に使われており、その年代の人達の口の中には、今でも存在しています。しかし、現在は水銀のリスクを懸念する人が多く、あまり使われなくなりました。今日の日本の歯科医院では、全く取り扱っていないところも多いです。

歯科用アマルガムの原理は次のようなものです。
水銀を、銀やスズの粉末とミックスして泥状のペーストを作ります。混ぜてすぐの時点では、まだ柔らかい泥のような状態です。それを削った歯の穴に詰めます。アマルガムペーストは、詰めてから5分くらいで硬化しはじめ、10分もすると、ほぼ固まります。しかし、完全硬化するまでは24時間以上が必要とされ、それまでは固い食べ物(せんべい等)を避けるべきとされています。


アマルガムのメリットは、
・レジンと同じように液状なので、虫歯を削った穴に直接充填することができる。
・硬化時に膨張するので、きちんと詰めれば、密封性が高められる
・金属なので、奥歯の咬合面に詰めても咬合圧に耐える
・含まれている銀イオンの殺菌効果により、二次カリエスになりにくい
・マイナス帯電のため、食物残渣を寄せ付けにくい

といったことがあるようです。
特に、奥歯の咬合面に直接充填できることのメリットは大きいと思われます。


反面、デメリットは、
・水銀を体内に吸収してしまう
・インレーよりは柔らかいので、長期利用によってすり減る
・水銀が蒸発していくことにより、詰め物に微細な穴が空き、経年劣化する可能性がある
・あまり大きい窩洞には適さないとされる(咬合面にちょっと空いた虫歯穴を埋める、くらいの時が一番効果が高い)

ということです。

何といっても、圧倒的なデメリットは水銀の吸収リスクです。
水銀は常温でも蒸発するので、詰めた後は、どんどん蒸発したり、唾液とともに溶け出していくと考えられています。
高温状態でなければ流出しない、というものではないのです。
食事の時の咬合や、熱いお茶を飲んだ時などの流出は避けられないと思われます。


硬化したアマルガムには水銀が数%しか含まれていない、と主張する人もいるそうですが(JIS工業規格ではそうらしい)、これって本当?と疑ってかかる必要があります。

だって、詰める際には50%もの水銀が含まれているのに、硬化したときには数%だなんて信じられません。もしそうなら、40数%は硬化するまでに流出または蒸発したということになり、それはそれで大変危険なことです(水銀は呼吸器から入るほうが人体へのダメージが大きい)。

アマルガムは、あくまで水銀が他の金属と合体して固体になったものなので、そこに水銀が含まれていると考えるのが妥当でしょう。


しかし、そんなものは、数年経過した患者の歯のアマルガムを採取して組成を調べれば済むことです。しかし、色々な英語版のサイトを見ても、EPA(アメリカの環境省)のサイトを見ても、水銀はあくまで50%と書かれており、硬化したアマルガムは水銀が少ないので大丈夫!とかいう記述は一切ありません。よって、やはり水銀はたくさん歯の中に残っており、年々ちょっとずつ流出しているというのが真相だと思います。





で、そんな水銀のリスクですが、水銀が有機的に脳や内蔵に蓄積されると、危険であるとされています。
頭痛、眩暈などの軽度のものから、歯茎の損傷、重度ではALSやアルツハイマー、胃炎、腎臓疾患などを引き起こします。

一応、アマルガムに入っているのは水俣病のような有機水銀ではなく、金属の水銀なので、人体への影響は限られていると言われています。水銀は、炭素系を採り込んだ有機水銀の形態が非常に危険ですが、金属のままであれば消化器からは吸収されにくいためです。ちなみに、水俣病の原因になったのも、メチル水銀を中心とした有機水銀でした。

しかし、
・体内に取り込まれたときに、消化器官の細菌が水銀を有機化する可能性
・食事や会話の際に、アマルガムから水銀蒸気が発生して吸入してしまう可能性
・口腔内の粘膜から吸収してしまう可能性

などがあり、完全にクロとは言い切れないまでも、シロとも言えません。

「水銀」という言葉に過剰反応した、センセーショナルな研究結果を報告する研究者もいます(歯科用アマルガムが口の中に多い人ほど、疾患率が上がる、等)。しかし、決定的な論拠とはなっていない、というのが、WHO等の見解のようです。

しかし、きちんと使えば歯科補修材料としては大変優れているアマルガム。
一長一短です。


基本的に、疑わしい材料だと思うので、水銀の影響を特に受けやすい発育段階の子どもには、使わないほうがいいでしょうね。(といっても、今では使っている歯科がほとんどないのですが)

レジンの耐久性を考えると、奥歯の咬合面には、使ってもいいような気も…。



こうやって考えると、本当に痛感するのです。
「虫歯が1本も無い」ということのメリットがいかに大きいかを。

余計な材料を口の中に入れなくてもいい。
痛くない。
噛み合わせも崩れない。
お金もかからない。
何より、余計なことで悩まなくていいので人生が楽しい。

健康って大事だね、と、歯がボロボロになってから、思います。

2013年6月3日月曜日

虫歯治療における保険のお話

現在の日本の虫歯施術というのは、少なくとも、保険で行われている限り、まともなものはごくわずかであろうと推測されます。

「まとも」というのは、

(1)虫歯部分を完全に除去する
(2)密封性の高い材料でフタをする(少なくとも10年はもつように)
(3)健全歯質はできるだけ削らない。神経はできるだけ抜かない。

という、この3点が実行できるだけでいいのです。
虫歯対策としては、ごくごく当然な要求だと思われます。

しかし、日本の歯医者ではこれはまず叶いません。

日本の歯科医の大半は、虫歯のみを100%きちんと削り取る、という技術が無い場合が多いと思われ、基本的に、削り残しか、または、削りすぎ、という状態になります。(削り残しがあれば、いくら詰め物をしてもそこからまた虫歯が進行します。削りすぎると歯が脆くなり、神経が近い場合には抜髄に至ることもあります)


それには、2つの理由があります。

・技術が無いのでできない
・保険での施術では赤字になるのでできない

まず1点目。
日本の多くの歯科医は、きちんと削って適切な材料で詰める、という一連の処置ができていないように思います。単純に、技術が無いからです。なぜ技術が無いかというと、完璧に仕上げた経験が無いからです。いつも適当に削って適当に詰める、あるいは簡単に抜髄してしまっているのです。特に、何でもかんでも保険適用のCR(コンポジットレジン)をくっつけて終わりにしている歯科医が多すぎます。

ではなぜ、彼らは適当なことばかりしているのか? なぜ完璧を期さないのか?

そこで2点目の理由が登場します。
日本の保険制度の下では、十分な時間と十分な材料費がかけられないから、です。

日本の保険点数というのは処置毎に決まっていて、削って2000円、詰めて3000円(あくまで仮の例)、とかいった具合です。

虫歯1本を(場所にもよりますが)きちんと削ってきちんと詰めようと思えば、1本について30分~1時間くらいは確保してほしいところです。

しかし、保険適用下ではそんなことはできません。1時間かけて数千円しか回収できないのであれば、確実に赤字です。歯科医院というのは、器具などの固定費や家賃、歯科衛生士の人件費など、かなりお金のかかる商売です。よって、保険診療だけを対象とすると、歯科医1人が1日に30人ほどを相手にしなければ損益分岐点にすら到達しないと言われています。

開業時間を10時間として、その間、休みなく患者を入れたとしても、1時間に3人を担当しなければならない計算です。1人20分です。これでは、落ち着いて虫歯など削れないでしょうから、削り残しがあっても適当に詰めてしまったり、雑に削りまくって神経まで到達してしまい、本来なら助けられたはずの歯の神経を抜いてしまったりすることになるのです。

また、材料の問題もあります。
保険適用の虫歯治療であれば、補修材料も限定されています。つまり、安い材料でしか詰めてもらえません。安い材料とは、つまり粗悪品ということで、強度が無かったり、短い年月で劣化したり、隙間ができやすい、といった材料のことです。(具体的には、パラジウムインレーやCR等)


このような事情で、日本の保険制度の下での歯科治療はかなり無茶なものになっています。
歯科医にとっても患者にとっても、メリットはありません。

それだったら、高い価格でもいいから、きちんとした施術をしてもらい、10年、20年と問題なく歯を維持できることのほうがはるかに重要ではないでしょうか。


現に、歯科医院もそれに気づいていて、最近は医院側が自由に高めの価格を設定した自由診療が主流になりつつあります。セラミックだのゴールドだの、よさそうな材料を使って詰める、と謳っているのです。虫歯以外にも、予防、審美、歯周病、インプラントなどを自由診療で幅広くやっているところも多いですね。

しかし、ここでさらに大きな問題があります。

「自由診療(保険の適用外の診療)であれば、歯科医はきちんとした治療ができるか?」

ということです。

おそらく、答えはNoでしょうね。

というのも、保険診療をしてきた歯科医には、まともに虫歯を削って詰める技術がそもそも備わっていない可能性が高いからです。

自由診療であれば、材料こそ良いものにシフトしているでしょうが、肝心の「削って詰める」という腕はへたくそなままなのです。


よって、しばらくの間、日本では、
「虫歯を削って詰めてもらったのに、またその下に虫歯ができる」
という、あほらしい二次カリエスになってしまう人が多いままだと思われます。

どんなにブラッシングを入念に行っても、詰め物の下は磨けません。
もし、虫歯の取り残しがあったり、詰め方不良で詰め物と歯の間に隙間が空いていれば、そこから虫歯は再度進行してしまいます。



私が今まで歯医者を何十件も回った経験から主観で言えば、日本の歯科医の9割以上は、へたくそです。彼らに削って詰めてもらうと、歯に何らかのトラブルを抱えます、将来。

彼らは、「削って詰めた歯は、それだけリスクがあると思ってください」「詰め物の下の虫歯は、外してみないとわからない」などと言いますが、それは無責任というべきものです。きちんと削り、きちんと詰め、定期的に検診を受けていれば、二次カリエスにならない、と保障してくれるのが正当な治療だと思います。

それができる(できそうな)信頼できる歯科医にたどり着くまで、面倒でも、歯科医をハシゴしたほうがいいと、私は思う次第です。