2013年5月21日火曜日

下がった歯槽骨は元に戻せないけど、将来の医療技術なら・・・

歯周病等で歯槽骨が減って下がってしまった場合、それをもとに戻したいと思うのは、当事者なら誰もが願うことでしょう。しかし2013年現在の医療技術では、それはなかなか難しいことだそうです。

今現在あるものとして、エムドゲイン、GTRそしてTE-BONEというものがあります。

エムドゲインとGTRは、歯槽骨の減った幹部の歯肉を切開して、薬を塗り、骨の再生を促す、という方法です。しかし、これは水平的に歯槽骨が減ってしまった症例(つまり、ある歯について周囲の歯槽骨全体が均等に下がってしまっている場合)には使えません。また、予後のレントゲン写真を見るに、あんまり回復しているようには見えません。気休め程度ではないかと思う時もあるくらいです。

もう1つのTE-BONEというのは、患者の骨髄液と血液を採取して、そこから数か月かけて骨を培養し、できた骨(実際は、粉末状の骨)を、歯槽骨の足りない部分の歯肉を切ったところに詰めて縫合する、という方法です。骨髄液からまず骨を生成して、それを利用するわけですね。従来は、腰の骨を一部切り取って歯槽骨の欠損部に詰めるという方法もあったらしいので、原理はそれと同じですね。実際に骨そのものを歯槽骨に付加して、時間とともに結合するのを待つ、ということです。

このTE-BONE、2012年から一般に提供され始めたもので、なかなか画期的な方法に思えますが、実はあまり期待できなさそうです。というのも、開発した大阪大学の症例紹介を見ると、どうも・・・骨が目に見えて再生しているようには見えないからです。(歯槽骨がほんのちょっとだけ増えたかな?という程度)


TE-BONEの一番いただけないところは、インプラント患者を前提にしていることです。
「インプラントにしたい。けど、歯槽骨に十分な厚みが無い」
という人向けの手術なのです。
だから、インプラントを打つのに十分な厚みと長さの歯槽骨が形成されればそれでいい、という手術です。

インプラントになる前の、歯周病で歯槽骨が減ってしまった人を救う、ということを想定したものではないようです。

私はインプラントなど絶対にしたくないので(だったら入れ歯のほうがマシ)、TE-BONEは使えないなぁと思う次第です。これを、「歯周病患者が、歯を失わないように、歯槽骨を回復させる手術」だったら、申し分なかったのですけど。


以上をまとめると、現在の技術では、水平的に減った歯槽骨を、目に見えて再生させる技術は無いようだ、ということです。エムドゲインやGTRは所詮気休め程度しか回復しませんし、TE-BONEはインプラント前提なのでアテになりません。

歯周病を患っている人が、ケアによって歯周病の進行をストップさせた後、元の状態に戻したい、という時に使える歯槽骨の再生医療が、登場してほしいなぁと切に思うのですが。

今のところ、一番有望なのは、FGF-2という薬を歯槽骨に塗ると、大幅に歯槽骨が回復する、という手法です。これは今、最終臨床試験中で、2015年の一般提供開始を目指しているそうです。早くその日が来るといいなぁ・・・。 ※ただし、上記FGF-2を用いた歯槽骨再生術は、2壁または3壁の局所的な歯槽骨喪失に限定されているようです。「水平」的な歯槽骨の再生方法が開発されるまでには、まだ時間がかかりそうですね・・・。